活動

2021.03.26

[活動]学級ミーティング

背景

 地震・津波・原発事故により多くの児童生徒が県内外に避難し、学校環境は激変しました。

 4月福島県教育委員会は、避難先の近くの高校に避難元の高校をサテライト形式で再開し、また転校も可として単位取得は元の高校が再開すればそこに戻り単位も認めることにしました。小中学生は、避難先の公立小中学校に転校することになった児童生徒が多数を占めました。自治体ごと避難したところや、避難地域外の学校に間借りする形で2校・3校が1つの校舎を共有し、1つの校舎に3つの校長室と3つの職員室、3つの保健室という所もありました。教員も原籍校を失い兼務辞令により、受け持ちの子どもが転入している学校を廻って指導するなど、通常ありえない混沌としたストレスフルな環境での新学期となりました。

 こうした中でも、子どもたちはけなげに頑張ります。外目には元気でその心の傷は身近な大人にも気づきにくいものです。また教師も児童生徒のケアを優先し自身や自分の家族のことは犠牲にしています。したがって被災した児童生徒や教師のPTSD(外傷体験後のストレス障害)を予防し、激変した学校環境への適応を助けること。さらに個別の支援を必要としている児童生徒を発見し、心のケアを行うことがスクールカウンセラー(以下SCと表記する)に求められました。そのため福島版「学級ミーティング」を福島県臨床心理士会SC委員会は作り、県教委の同意のもと実施しました。

福島版・学級ミーティングとは

 震災直後よりPFA(サイコロジカル・ファーストエイド)が推奨されデブリーフィングを用いることの危険が伝えられていました。安心安全をひとまず優先し、トラウマ体験を語らせてはいけないとトラウマに触れる危険を警告していました(小林,2011)。

 しかしながら福島県は、原発事故による低線量被曝という人類が未体験の危機にあり、これまでのセオリーを当てはめるだけでは対応できない状況でした。放射線の健康不安は、長期に亘り安心安全が保障できない状態を作りました。またこれだけの学校環境の変化や、避難区域からのたくさんの転入生があり、被災状況の違う子どもたちが一緒に学ぶ状況を考えたときに、この危機を共に乗り越え、落ち着いて学校生活を送るためには、お互いの思いを理解し合うことが必要です。そこで、デブリーフィングのように侵襲的でなく比較的安全に"今の思い"を自発的に語ってもらい、教室の仲間に共感支持される経験を通して、ピア・サポート力を賦活しエンパワメントされるような、教師と児童生徒の絆を結ぶ学級活動になるよう工夫しました。
 

デブリーフィングとの違い

共感と知恵を分かち合い自分たちで対処できることを見つけエンパワメントしあうことが、学級ミーティングの目的であり、デブリーフィングとは異なるところです。

・外部の専門家によるサポートではなく、内部の成員(担任・クラスメイト)によって行われるピアサポート。ただし内部の成員が効果的に実施できるように専門家が間接的にバックアップをする。
・単発ではなく、継続的なフォローを前提とする。
・語ることによるカタルシス効果よりも、支え合うことによるエンパワメント効果を重視する。
・心理的安全性を重視する。無理に聞き出さず話したくない時はパスしても良い。話を聞くことも辛い場合は別室に退避しても良い。

学級ミーティングの目的

①避難の子どもたちと地元の子どもたちが仲間として支え合えるようピア・サポートを賦活し、被災により激変した学校環境への適応を図る。心を落ち着けて学習や活動に取り組めるようにする。

②子どもたちと自らも被災し頑張っている先生方の心のケアとストレスマネジメント

③個別にこころのケアが必要な子どもの発見と対処

学級ミーティングの手順

①教員に学級ミーティングをレクチャーする

 学級で実施する前日の放課後、クラスで担任がファシリテーターとして学級ミーティングを行うために、SCは以下の②〜⑥までを実際に教員集団に対して「学級ミーティング」を説明しながら実施する。教員は体験することで効果を実感し、子どもたちに自信をもって臨める。何より教職員の心のケアになる。

教員へのレクチャーの様子

②予備活動(質問紙に記入し心の準備)

・健康アンケートにチェック
5項目健康調査(震災直後):覚醒・再体験・回避・放射能不安をチェック
22項目健康調査(中期以降):心の健康度をスクリーニング
・自由記述
質問1「あなたは今どんなことを思っていますか?感じていますか?」
質問2「それについて、どんな工夫をしていますか?」
質問3「これからどうしたいですか?どんなことができますか?」

予備活動の様子

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