活動

2023.05.27

災害後の親子の心のケア(福島・東日本大震災)

東日本大震災後の福島県にて行われた親子の心のケアについて紹介します。災害・紛争・戦争などの緊急時の親子の心のケアのknow-howとして参考にしていただければ幸いです。当記事は2021年世界乳幼児精神保健学会(WAIMH)でのシンポジウム発表を元に作成しました。当記事の情報は2021年時点のものです。(演題:福島緊急事態後の親子のための遊び療法 2つのアプローチ 「親子遊びと親ミーティング」と「箱庭療法」, 演者:NPO法人ハートフルハート未来を育む会 臨床心理士 成井香苗)

親子遊びと親ミーティング

次にそれぞれを具体的に報告します。
1.実績としては、2011年6月から現在も支援を継続しています。27市町村で繰り返し実施した小グループ活動。10年間で延べ1,136回、派遣した保育士・臨床心理士5,520人。25,027人の親子が支援を享受しました。

2.構成と効果
 ① 親子遊び:日本文化の「わらべ歌遊び」による愛着形成
保育士の導きで、母親たちがわらべ歌(郷土の子守歌)を歌いながらわが子と遊ぶ。子らは母が歌う歌に応じて遊びながら笑う。すると母も笑う。その音楽的な響き合い「Communicative Musicality」が母子の相互作用を生み愛着を促し、ストレスも解消させます。わらべ歌は私たちの文化であり歴史的に体にしみこんでいるものなので、懐かしく回復力(レジリエンス)があるのです。
 集団で行うので、シンフォニーのように響き合う効果があります。
2.構成と効果
 ②親ミーティング:臨床心理士がファシリテイタ―となって安心な空間を作り、不安と孤独な葛藤を持つ母親たちの抑圧した気持ちを引き出し、語り合います。支え合い,empowermentされて危機の中でもやっていけるとパワーを得ます。他の親の経験がメンバーを成長させることができます。

 ③事後フォロー:保健師が必要な関係機関につなぎ、継続的に親子を見守ります。

 ④相乗効果:保育士と臨床心理士、保健師の3種類の専門家の協働がハーモニーとなって被災親子を多角的に相補的に把握し、子どもの情緒的問題や発達的問題にも対応する支援構造を形成しました。
 2020年は新型コロナウィルスが蔓延し、更なる危機として福島の親子に追い打ちをかけました。
 子どもを産んだばかりの母親たちは、見えない未知のものへの不安を訴え、ウィルスへの感染を防ぐため人との接触を避け家に引きこもらざるを得ませんでした。それは子育ての孤立化となって、放射線不安の時と共通でした。
 「親子遊びと親ミーティング」はCOVID19の流行にも有効ででしたが、非接触の支援とするためリモート会議のツールを使って開催しました。画面越しの支援は、Communicative Musicality音楽的響き合いという点では少し効果が減じましたが、孤立化を防ぎ前向きに頑張ろうというピアミーティングの効果は変わりませんでした。
44 件
〈 2 / 4 〉

Related